自由気ままな旅に出ています


by pepo629
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

Akira & エリカ 3

6月10日、この日は僕の誕生日。17年目の誕生日。

誕生日は僕の一番大好きな日だ。カナダでは何歳になっても(たとえ年を取っても)家族が集まり、それぞれの気持ちを伝えるイベントである。
日本では10代くらいまでだよ。あとは恋人に祝ってもらう事がほとんどだよ、そう日本を知っている人からの話に驚いたこともあった。
2月のバレンタインで僕がクラスメイトの女の子から両手いっぱいのチョコレートをもらってきたとき、何一つイヤな顔をしなかったエリカがこの日はあからさまにこう言った。

b0005238_11584479.jpg


「欲しいものが手に入ったら、高望みするようになるの。人間って。」
「どういう意味だよ、それ?」 喧嘩腰の彼女に僕も苛ついた声で聞き直した。
「手に入れようと思って一生懸命になっていた時期なんてすぐ忘れちゃうのよね。」
答えになってないじゃないか、そう言おうとした僕を遮るようにお風呂場に行ってしまった。

エリカって性格は強いと思う。意固地だし負けず嫌いだ。僕らが意見の相違で喧嘩しても彼女から謝ることはない。自分でも認めているが、最後、捨てぜりふを残して、突っぱねることがほとんどだ。
意地悪なのではなくて、ただ素直に自分をさらけ出すことが苦手なんだと僕は思う。残念なことに、同性の友人の中には彼女を嫌う人もいる。学級委員をやって目立つという存在も要因のひとつなのだろう。職員室にプリントを取りに行ってる間、こそこそと耳打ちで彼女の悪口を言ってる同級生の姿を数回見たことがある。僕が一緒に住んでいることは周知のことなので、あからさまに大きな声では言わないが、噂では僕と彼女が一緒に住んでいること自体をよく思わない人もいるらしい。

普段は別に気にするわけでもなく自然体に振る舞っていたが、事件後はこういう噂類は僕を苛つかせたし、苦しめた。

こんな事を言ってくるやつが居た。中学卒業間際のことだ。
「エリカのからだ触ったことあるんだろ?」
「無いよ」
男同士というのは常にエッチな話をする。これは国際的にどこでも同じだ。
エッチな話にはレベルがある。聞いて良いところと聞くべきではない境というものが暗黙の了解もある。恋人が居る相手に根ほり葉ほり聞くことは世界中どこでもあるが、こいつのレベルは最悪だった。
「胸が大きいんだろ?どれくらいだ?」手を使って胸の大きさを表現する。
「触ってないし、見たこともないっていってんだろ!」
顔をふくらませて怒りを示すと彼はこういった。
「なんだ、良いじゃんか、一緒に住んでるんだから女の裸くらい覗けよ」

余計なお世話なんだよ。
言葉にはしなかったが、僕の中では怒りが爆発寸前だった。
やつの挑発を無視し、僕は立ち上がった。身長の差で完全に負けるやつに俺は一言こういった。「二度とこういう事を言うな」

周知のように僕らは一緒に住んでる。 僕はエリカの家にホームステイをしている。一緒にいて、ほっとするとお互いの存在を認めている。
僕らがお互いを愛し合っていると気が付いたのは別に最近でもないし、最初から運命的な出逢いをしたと気持ちを持っているわけでもない。
まだ日本に馴れていない最初の頃、週末毎に京都市内をぐるぐる回っては誇らしげに京都の文化や史跡を紹介してくれるエリカに好意を持って行くようになったのは僕だ。
僕が彼女に恋をした・・・・。こんな気障な言葉を言えるようになるなんて思いもしなかったけれど。

 



彼女は日本人だ。国籍上も彼女は正真正銘の日本国籍。僕はカナダから来て愛情を表現する方法を二つ学ぶことが出来たけれど、彼女はカナダ式を知らない。いや、これは間違いだ。彼女の両親はカナダから来て12年後彼女が生まれる前に帰化している。身も心も日本に染まっているという両親だが、育て方はやはりカナダ式であったに違いない。抱き、キスをすることにエリカは抵抗無く育ったはずだ。

そう言う意味では僕の方が日本的に育ったと言えるだろう。小学校に上がるまで家族三人で暮らしてきたが、家の中では英語でも生活習慣は日本そのものだった。
僕が地域から遠くなるから反対したために日本語学校に通うことなく、地元で生活することになった。様々な文化が融合し、様々な国籍の友人を見てきたが、友達の家に招かれる度にそれぞれの文化があるんだ、エリックの家ではキスも抱擁もあったけど、ユージンの家では自分の家と変わらない・・・などと小さいながらいろいろなことを学んだものだ。

 その家ではその家のしきたりがあるんです。
日本語学校に初めて行きたいと言った日から半年後先生は僕の小さい頃からの疑問に答えを引き出してくれた。

カナダ、日本との間で大きな違いと言えば、キスや抱くことを小さい頃から愛情を示す表現としてやってきたか、そうでないかという違いだろう。
感情表現や愛の中で一番重要なのは過程であることも万国共通である。

僕はエリカが日本人だと言い切った。両親がカナダ式で娘を愛したとしても、彼女も小さいながらに京都という土地で学んだに違いない。キスや抱擁をするのは家だけだ。公共の場ではやるべきではない・・・と。

彼女の愛の表現も保守的と言えば堅すぎるけれど、決してオープンではない。
控えめだ。時にキスや抱き合うことを怯える事もあるくらいだ。

手をつなぎ、肩を寄せ合い、一緒に歌を歌って・・・。
歯磨きをしている僕の横でお化粧したり、試供品でもらってきた小さな包みを僕に渡して、「お風呂の後にはお顔の手入れ!顔は命なんだから」と笑ったり、髭を剃っている僕に「クリームを塗り忘れないように、ごつごつの肌は嫌いだからね!」と言ってみたり。

服を着替えてるときに間違えてドアを開けてしまい、タオルを投げつけながら
「裸見るならお金貰うからね!」といったエリカ。
それを聞いた僕が「1000円払うよ」と笑っていったら
「1億円貰っても見せないわよ」と言う始末。


毎日が楽しかった。
でも、まさかこんな日常が簡単に崩れ去るなんて誰が予想出来ただろう。予想できない未来を考えることが幸せなのに、起こってしまった過去からの立ち直りがこんなにも辛いなんて当人にならない限り決して分からない。

二人だからやる気が出たんだと思う。乗り切ろうという気持ちも強かったんだと思う。
もしどちらか一方だけが傷ついているだけなら、5年先の自分たちの存在さえ危ぶまれる気がする。

僕が試合の遠征で別の高校に行ったあの日から2ヶ月経った後にエリカの記事が新聞の三面記事、端の方に載った。同時期、皮肉なことにあるテレビ番組の放映で僕らカップルが茶の間で話題を呼んだ。マスコミにとって格好のターゲットになってしまった・・・・。


※ 文中の写真チョコレートケーキは今日焼いたバレンタインのケーキです。宛先?それはお父様。(爆)
* The cake is for Valentain's day for tomorrow. The cake is for my daddy....... $) hahaha!
[PR]
by pepo629 | 2005-02-17 17:49 | Short Story