自由気ままな旅に出ています


by pepo629
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Akira  &エリカ 6

すべての準備がそろい、大きなスポーツバッグを肩に掛けた時、
「Akira, 何が起きてももう驚かないでね」
意味ありげな彼女の言葉が背中から聞こえた。
首を傾げてそれでも深く考えることなく「行って来るよ」と軽く包容をした。
期待を込めて。 新しい希望を込めて。


門扉を開けると待ち受けていたカメラのフラッシュと報道陣がマイクを向けながら
「今の気持ちはどう?今日の試合にむけての目標をお願いするよ!」
騒然とする周囲をよそにすっかり僕は自分の世界に入り込んでいた。

自分の過去。自分というアイデンティティ。
これまで何度思っただろう。
僕は日本人なのだろうか、それともカナダ人なんだろうか。
きっと両方だから両方のアイデンティティを持っていてもおかしくないんだと思う。

祖母が日本に住んでいると聞いたのは小学校を卒業した日だった。
6月のさわやかな風が僕を包み、同時に自分という存在をしっかりと認識した日でもあった。

両親が離婚したそのときの気持ちは悲しさだけしかない。
でも理由は分かる。僕なんだ。僕が生まれたことで母と父の関係は崩れた。
男と女の性って言うものを学校ではじめて先生が口にしたとき、恥ずかしさと戸惑い、そして知ったかぶりのクラスメイトを前に僕はようやく求めていた答えが見つかったような感覚に落ちた。

日本に来た理由。
それには祖母を見つけて僕自身を捜したいという気持ちがあった。
もう一つの祖国であるニッポンを見てみたかった。


バスケットボールを教えてくれたのは父であり、父の友人でバスケットボール元世界チャンピオンのチームにいたトニーだった。トニーはトロントで生まれ育ち、オリンピックにも出場、5年間代表チームでキャプテンとして功績を残した人だ。

僕は5歳の頃から父が暮らすアルバータ州のバンフで夏を過ごし、一夏はバスケット・登山そして釣り三昧だった。
外から見れば幸せな父と子の図だろう。

でも他人が決して入り込めない僕らの関係は、ドラマのようにロマンティックなものではなくむしろ傷ばかり背負っていた。

父が同性愛者だと言うことを小学校の先生に初めて聞いたのはやはり、ショック以外の言葉では言い表せない。
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by pepo629 | 2005-07-10 22:43 | Short Story