自由気ままな旅に出ています


by pepo629
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にわか雨の予報士 5

どのくらい時間がたっただろう。
顔を僕の胸に埋めたまま動かない萌。

「落ち着いた?」
長い沈黙を破るように僕は彼女に語りかけた。

「物事って何で悪いことはズンと重くのしかかるんだろうな。」
抑揚を付け少し上がり目になった言葉。
「良い思い出はさ・・・なんて言うかな、すーっと通り過ぎるって言うのに」
(そうは思わない?)ちょっとそういう気持ちを込めて言った。
しばらくの沈黙。

腕が伸びて僕の肩を抱く萌。
「あったかぁーい」
言葉はくぐもっている。

萌の話はこういう具合だ。
お互い仕事が忙しくてお互い顔を合わせることの少ない彼女の両親が
お互いに恋の相手を見つけ、ほぼ別居状態であること。
行き場のない彼女は一人暮らしを考えていること。
そして高校時代から続けているボランティア団体を通じて介護士の仕事を目指すんだと結んだ。

「いろんなことが重なるとご飯食べられなくなって。」

分かった気になるのはイヤだが、放って置くわけにはいかない。
自分が彼女の相談相手になれることがとても嬉しかった。

「一人暮らしをする前に・・・・」
しばし沈黙する僕を見上げた。
「する前に・・・?」
「体力を付けなくちゃ駄目だろ」
「体力?」
「そうさ、頑張りすぎると体が参っちゃうだろ?」
見た感じ、彼女自身痩せすぎていることに危機感を持っていない。
傷つけないように言葉を選んで僕は少し考えてしまった。


「ねぇ。聞いて良い?」
声を出さずに頷いた。
「七菜(なな)と上手くいってる?」
七菜とは僕の恋人だ。 萌の大の親友で高校3年の秋、告白された。
それから1年半が経とうとしている。
上手くいってる? 
この質問に僕は首を振った。右にそして左に。

「ショッキングなことを言うようだけど、彼女ね、大学辞めるみたいだよ」
そういえば七菜は会おうともしない。メールさえ送ってこない。
家からも出ないという噂まで聞く。
「でもね、なんでか知ってる?」
首を再度右にそして左に振る。

「本当に知らないの?」
縦に首を振って「知らない」と一言。

「体がボロボロになってしまったんだよね。今の私と同じ。」
黙り込む以外方法しかなかった。言葉を失った。
時々、何も言わない方が良いときもある。
言葉として出す方が傷つけてしまうことが怖かった。

恋人の相談相手になれなかったことにとても残念な気持ちだった。
七菜、一体何があったんだ?
萌の言葉を待った。


にわか雨の予報士 4

にわか雨の予報士 6
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by pepo629 | 2005-07-15 12:55 | Short Story