自由気ままな旅に出ています


by pepo629
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にわか雨の予報士 6

バカヤロウ、オレハ、「ヤクタタズ」 ナ・ノ・カ・ヨ・ォ・・・
頭の中で電報を打っているかのようにカタカナで文字が現れる。

時間が経ってもまだショックから立ち直ることが出来ない。
事情が複雑すぎる。
両親の夫婦関係としての問題をアレコレ言う資格はもうないし、独り立ちだって出来る年齢でもある。だけど・・。なんてこの社会が抱えている問題は深刻なんだろうと当事者になってみれば考えざるを得ない。

「七菜の家族は宗教団体に入ったの。」
「宗教団体?」

宗教団体と言えば、94年6月24日東京地下鉄で起こった「サリン事件」と言う名前を思い出さずにおれない。オウム真理教。
最高指導者だった松本という男は化学兵器(毒物)によって12人を殺し、世界を入れようとした。当時山梨にあった施設は一斉に捜査の手が入り、今彼は刑務所で死刑判決の実行を待っている。一時の強大性はなくなったものの、新たにアーレフと名前を変えて、活動を続けている。驚くべきはサリン事件を起こした実行犯は落ちこぼれではなく、いわゆるトップコースを歩んできた奴らだった。官庁にいてもおかしくないくらい高い教育レベルをもっていた奴らだった。
不幸なことに、未だ犯人全員逮捕とまでは至っておらず、もちろん被害にあった人たち、
遺族、そして未だ後遺症に苦しんでいる人たちが居ることも忘れてはいけない。

「そう、信じる貴方は救われますっていう種の・・」
「止めなかったのか?」
宗教の自由はあるし、言論の自由は認められている。
だけど・・・。

俺の存在はやっぱり 「ヤクタタズ」なのかよ。





七菜を初めてベットに誘った日、俺ははっきり言われた。
「わたしじゃ役不足ね。」
恋人を抱きしめて、興奮で熱かった体温は一気に冷めた。
一瞬にして表情は硬くなり、冷たく
「それはどういう意味なんだよ。」と聞いたら
「涼君はプロポーションが綺麗な女優みたいな人が好きなんでしょ?」と下を向いて言う。
俺の顔を見ないで・・・だ。

直後に「好きな彼女の体を抱くことにプロポーションの善し悪しなんて関係ないに決まってるんだろ!もっと自分に自信持てよ。女優みたいな綺麗なお人形を抱いたって男は満足しないんだよ。今初めて抱いたおまえの方が綺麗だって!」
気分は最悪だった。
俺はおまえを抱いたんだぞ。何でそんなこと言われなくちゃならないんだよ。しかも、抱き合った初めての記念日に感動の余韻に浸る間もなかったじゃないか。

事実、その日以来俺は自分からベットに彼女を誘わなくなった。

「一緒にいると気を遣わなくて良いの。ホッとできる存在なの。貴方が好きな理由はそれ。」
七菜は繰り返した。

本能に生きてるという感じだった。
お腹がすけばご飯を食べ、俺を食べたくなったら食べる。
そういう感じだった。
七菜が精神的に苦しんでるなんてことはそのころから兆候があったのかも知れない。

でも・・・・
俺は彼女にとって一体何者だったんだ?

彼女は布教だからといって俺の家に訪ねてくるのか?
「幸せになりたかったらわたしと一緒にきてくれない?」って誘うのか・・・?

俺は萌の話を聞きながら、七菜の行き着く先を見つけたいと思うようになった。
当事者としてではなく、無責任のように見えるけど、一人の傍観者として。

幸せって何?
家族ってなんなの?
自分はどうすればいい?

答えが見つかるのなら彼女が宗教に手を伸ばしたように僕は勉強でも仕事を始めようと何でも良かった。
新しい何かが、求めている何かが見つかるなら。

幸福感をどう感じるかは個人差があるけど、幸福を手に入れるには
ある程度の努力は必要だ。努力があるから得た喜びが大きいのだから。

これ以上ヤクタタズにはなりたくない。

七菜のことを想いながらも、彼女に携帯でメールを送った。

「君には君の事情があるのだろうけど、これ以上君から連絡を待てない。来月以降新しい勉強を始めようと思う。さようなら。」

連絡が途切れてからほぼ2ヶ月が経とうとしていた。

にわか雨の予報士 5

にわか雨の予報士 7
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by pepo629 | 2005-07-17 17:37 | Short Story