自由気ままな旅に出ています


by pepo629
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にわか雨の予報士 8

よく晴れた週末に父が僕をツーリングに誘った。
先週金曜日、冬美に聞いた話は1週間経ってもまだ消化不良のままだったが、相談するにはちょうど良い時間が開いた。試験週間の山場も過ぎた。今までもやもやしていた気持ちを一気に解消するにはちょうど良い。

冬美の話はそれほど深刻には見えなかった。でも、萌からの話を聞いていたせいか、なんだか気になって仕方なかった。「幸せを求めて藁にもすがるっていうじゃない?」冬美の一言が、残念そうに萌が呟いた「親友の私にさえ相談してくれなかったんだよ!」という言葉とリンクする。歯を食いしばって悔しさを表現しても、七菜の気持ちを僕が理解できるわけではない。もしかすると本人でさえ分かっていないかもしれないからだ。





目的地の天橋立は日本三景の一つとして指定され、海とそして温泉、風景と気分転換するには最高の場所だ。夕方日が落ちる前に温泉に入る予定だ。
海からの風は潮の香りがする。
天橋立のすぐ近くにある神社の前にバイクを止めた。

「・・・でどうだ?」父が僕に尋ねた。
「なにが?」しばし物思いにふけっていた僕は父の言葉が頭に入らなかった。
ヘルメットの紐のところで遊びながら父は溜息をついた。
「なんかおかしいぞ。最近涼子も涼も。上の空っていうか、話の本随が見えてこないんだな。」

さすが父親である。普段から話をしている関係だからだろう。お見通しだった。
「試験勉強のせいだと思っていたんだろうけどな」
首を振った。「親父の思ってる通りだよ。姉貴も俺もちょっとおかしい。」
ほぉ。ひげを触りながら父は関心を示した。


僕はこの一ヶ月の話を一気にした。父は静かなそして穏やかな表情だった。
萌の話、七菜の話、そして冬美に聞いた姉貴の話。
ずいぶん話したと思う。話が切れたとき、父は小さく笑った。

小さく笑った父が「恋をするってパワーがいるからなぁ・・・。力尽きそうだなって思ったときに、海ちゃんがこう言ったんだよ」
海ちゃん。父は母のことをそう呼ぶ。
「『夏、もしどこかに行きたくなったら「山・川・海」』ってね」
母から父へプロポーズしたんだ。その瞬間僕は新しい事実を知った。
父の名字は山川。母の名前は海。 
笑いながらそして恥ずかしそうに言ったんだろうなぁ。

「山川海」はテレビ局のニュース番組のアナウンサーを勤めている。
小さい頃から覚えやすい名前からかテレビを見た友人から母のことを羨ましがられた。
「いいなぁ、綺麗なお母さんで。涼くんに私じゃ物足りないよ」
小学校時代の初恋の相手にまで言われたっけ。七菜が言ったことと同じように。

親父に話すことですっきりした。まぁ、七菜の言葉だけは言わなかったけど・・・。



GONシェフの写真あり。やっぱりフォトグラファーに憧れる。(ハート)

にわか雨の予報士 7


にわか雨の予報士 9
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by pepo629 | 2005-08-09 10:11 | Short Story