自由気ままな旅に出ています


by pepo629
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虹色の空を見る日に

※病気で目が悪くなった人が空が黄色くみえたといっていたことからこれを書きました。



アカリは生まれつき弱視で、普段から色つき眼鏡をかけて歩いている。

大きくてキラキラ輝く瞳にはほとんど光が差し込まない。

アカリが大学合格が決まったとき、側で見守っていたいとこの聡(さとし)はホッとした。

入学式に大学の校門前で撮った着飾った二人の写真。

真っ赤なワンピースに黒いジャケットをきたアカリの腕に輝く銀のブレスレット。

アクセサリーデザイナー聡が手作りしたものだ。

「楽しい大学生活が送れたらいいな。」聡の言葉にアカリは頷いて答えた。

それから数ヶ月後の夏のある日、聡が町を歩いていて見たのはアカリが男と歩いてる姿だった。

週末、アカリに聞くと、アカリは赤い顔をしてこう答えた。

「航(わたる)が私に虹色の空を見せてくれるって言ったの」

「虹色の空?」聞き直した聡。アカリは続けた。

「彼ね、カメラで写真を撮るのが趣味で・・空を撮ることが多いの。空を眺めることが多くて・・
様々な空の表情を私にも見せたいんだって。」

「良かったじゃないか。優しいやつに会えて」聡は出されたコーヒーをすすった。

アカリが大学を卒業し、5年が経ったある日、フォトグラファーになった航が個展を開くというので、 休日、聡は電車に乗って大阪市内にあるビルの一角へ出掛けていった。

作品はアカリが言っていたように空の変化を写したものが大半だった。

心が現れるような真っ青な空、雨が降り出しそうなグレーの空、太陽が沈んでいく夕方の空・・・。

そして部屋の一番奥の空間に飾られていた2枚の写真に聡は言葉を失った。

1枚目は太陽に反射した水中に映る「虹色の空」、2枚目はアカリの裸体だった。

聡はじっと立ち止まったままアカリの裸体を見つめ続けた。

「随分お気に召したみたいですね。」
振り向くと男が立っていた。

「山路航です。今日はお越しくださいまして有り難うございます」
男は頭を下げた。

聡も会釈する。「この裸体の女性の写真にどうして「虹色の空」という題が付いてるんですか」

聡の聞いた質問に航はこういった。

「彼女は大学の時の恋人です。ある時、彼女が『本では空が青いって書いてあるんだけど、私の空は黄色い』と僕に言ったんです。
衝撃でしたね。そんなことから僕は写真という形が残る方法でなんとか虹色の空を撮ってやろうって決めたんです。」

「それで・・この右の写真が虹色の空だっておっしゃるんですね。」

「ええ・・まだまだ納得できませんが。今の自分にとって「虹色の空」ですね」

「是非、ア・・いや、彼女に「虹色の空」見せてやってください。長い間楽しみにしてましたから。」

アカリは手術が成功し、瞳に光が差すようになっていた。もうすぐ退院のはずだ。

「僕にとって「虹色の空」は生き方を教えてくれた先生ですね。
一つの考えだけに固執した生き方ではなく、様々な生き方があるって 教えて貰いましたからね。彼女には感謝し切れませんよ」 航の目は輝いていた。

「虹色の空を求めていたのは・・・私も同じです」聡も深い息を吸った。

航は咳払いをして自分の作品を見比べた。聡も虹色の空を見つめる。

背後の気配に気が付かない二人。

「聡!航!」

同時に振り向いた男をアカリは「ただいまぁ!」と笑顔で迎えた。

「素敵なプレゼントをありがとう」深々とお辞儀するアカリ。

聡と航はお互い顔を見合わせ、笑った。

「お帰りアカリ。」聡が言った。続いて航が「僕の方こそありがとう。」

その晩3人はバーでお酒を飲みながら思い出話に花を咲かせた。

時間を忘れるくらい楽しいひとときだった。 //




あとがき

こころの中の風景は本当に写真には納めきることが出来ません・・・。
感じることを忘れないこと、これを胸に今日も生きていきます。(笑
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by pepo629 | 2004-08-19 15:15 | Short Story