自由気ままな旅に出ています


by pepo629
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カテゴリ:Short Story( 42 )

にわか雨の予報士 6

バカヤロウ、オレハ、「ヤクタタズ」 ナ・ノ・カ・ヨ・ォ・・・
頭の中で電報を打っているかのようにカタカナで文字が現れる。

時間が経ってもまだショックから立ち直ることが出来ない。
事情が複雑すぎる。
両親の夫婦関係としての問題をアレコレ言う資格はもうないし、独り立ちだって出来る年齢でもある。だけど・・。なんてこの社会が抱えている問題は深刻なんだろうと当事者になってみれば考えざるを得ない。

「七菜の家族は宗教団体に入ったの。」
「宗教団体?」

宗教団体と言えば、94年6月24日東京地下鉄で起こった「サリン事件」と言う名前を思い出さずにおれない。オウム真理教。
最高指導者だった松本という男は化学兵器(毒物)によって12人を殺し、世界を入れようとした。当時山梨にあった施設は一斉に捜査の手が入り、今彼は刑務所で死刑判決の実行を待っている。一時の強大性はなくなったものの、新たにアーレフと名前を変えて、活動を続けている。驚くべきはサリン事件を起こした実行犯は落ちこぼれではなく、いわゆるトップコースを歩んできた奴らだった。官庁にいてもおかしくないくらい高い教育レベルをもっていた奴らだった。
不幸なことに、未だ犯人全員逮捕とまでは至っておらず、もちろん被害にあった人たち、
遺族、そして未だ後遺症に苦しんでいる人たちが居ることも忘れてはいけない。

「そう、信じる貴方は救われますっていう種の・・」
「止めなかったのか?」
宗教の自由はあるし、言論の自由は認められている。
だけど・・・。

俺の存在はやっぱり 「ヤクタタズ」なのかよ。

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by pepo629 | 2005-07-17 17:37 | Short Story

にわか雨の予報士 5

どのくらい時間がたっただろう。
顔を僕の胸に埋めたまま動かない萌。

「落ち着いた?」
長い沈黙を破るように僕は彼女に語りかけた。

「物事って何で悪いことはズンと重くのしかかるんだろうな。」
抑揚を付け少し上がり目になった言葉。
「良い思い出はさ・・・なんて言うかな、すーっと通り過ぎるって言うのに」
(そうは思わない?)ちょっとそういう気持ちを込めて言った。
しばらくの沈黙。

腕が伸びて僕の肩を抱く萌。
「あったかぁーい」
言葉はくぐもっている。

萌の話はこういう具合だ。
お互い仕事が忙しくてお互い顔を合わせることの少ない彼女の両親が
お互いに恋の相手を見つけ、ほぼ別居状態であること。
行き場のない彼女は一人暮らしを考えていること。
そして高校時代から続けているボランティア団体を通じて介護士の仕事を目指すんだと結んだ。

「いろんなことが重なるとご飯食べられなくなって。」

分かった気になるのはイヤだが、放って置くわけにはいかない。
自分が彼女の相談相手になれることがとても嬉しかった。

「一人暮らしをする前に・・・・」
しばし沈黙する僕を見上げた。
「する前に・・・?」
「体力を付けなくちゃ駄目だろ」
「体力?」
「そうさ、頑張りすぎると体が参っちゃうだろ?」
見た感じ、彼女自身痩せすぎていることに危機感を持っていない。
傷つけないように言葉を選んで僕は少し考えてしまった。


「ねぇ。聞いて良い?」
声を出さずに頷いた。
「七菜(なな)と上手くいってる?」
七菜とは僕の恋人だ。 萌の大の親友で高校3年の秋、告白された。
それから1年半が経とうとしている。
上手くいってる? 
この質問に僕は首を振った。右にそして左に。

「ショッキングなことを言うようだけど、彼女ね、大学辞めるみたいだよ」
そういえば七菜は会おうともしない。メールさえ送ってこない。
家からも出ないという噂まで聞く。
「でもね、なんでか知ってる?」
首を再度右にそして左に振る。

「本当に知らないの?」
縦に首を振って「知らない」と一言。

「体がボロボロになってしまったんだよね。今の私と同じ。」
黙り込む以外方法しかなかった。言葉を失った。
時々、何も言わない方が良いときもある。
言葉として出す方が傷つけてしまうことが怖かった。

恋人の相談相手になれなかったことにとても残念な気持ちだった。
七菜、一体何があったんだ?
萌の言葉を待った。


にわか雨の予報士 4

にわか雨の予報士 6
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by pepo629 | 2005-07-15 12:55 | Short Story

にわか雨の予報士 4

ふと我に返る瞬間というのは端から見るときっと間抜けなのかもしれない。
萌と逢っているというのになんだか遠くから彼女を見つめているのではないだろうかと錯覚に陥る。
「ねぇ。聞いてるの?」萌の苛ついた声に僕は横に首を振った。(ごめん、聞いてなかった・・)と心で思いながら。
いいや、聞いていた。本当は聞いていたんだけど、自分の中に入ってこなかった。耳がまるでちくわになったみたいに言葉が右から左へ通り抜けていった。

「もぉ。いつもこうなんだから!」ぶすっと拗ねて見せる萌。
萌の体を改めて見つめる。ずいぶん痩せている。最後にあった日はそんなでもなかったはずなのに。僕がずっと黙っていることに不満を爆発させようとした。細い腕を僕に向かって振り下ろそうとしている。叩かれることを察知して、僕は腕を広げた。下ろされる瞬間と僕の腕が広がった瞬間は同時だった。バランスを崩した萌は次の瞬間には自動的に僕の腕の中に倒れ込んだ。

しばらく萌は動かなかった。高校2年の夏ふざけ半分でキスをして以来だった。体と体の接触は。泣き出すのかと思ったけど、すすり泣く声はない。
「泣きたいときは泣いた方が良いぞ」

その言葉を聞いた後もじっとしたままだ。
沈黙は続く。萌の髪の毛と萌の体を僕は胸で受け止めていた。
そして彼女が今精神的に参っていることを感じずにはおれなかった。
体を抱き寄せて、僕は目を閉じた。彼女の心に入ってゆくにはこうやって集中することが必要だから。

にわか雨の予報士 3

にわか雨の予報士 5
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by pepo629 | 2005-07-13 11:18 | Short Story

カバ君の一日(笑)12


今日のカバ君は朝一番からコピー機と大奮闘。(爆)
紙が詰まったらしく、自分で何とか直そうとするが、指が短く(爆)
出来なかったらしい。
そして意を決してサービスセンターへ電話するもののその電話は通じなかったらしく、
舌打ちをしていると、もう一人の職員の男の子が治してしまった。(笑

カバ君の一日はやはり笑いで始まる。
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by pepo629 | 2005-07-12 11:31 | Short Story

Akira  &エリカ 6

すべての準備がそろい、大きなスポーツバッグを肩に掛けた時、
「Akira, 何が起きてももう驚かないでね」
意味ありげな彼女の言葉が背中から聞こえた。
首を傾げてそれでも深く考えることなく「行って来るよ」と軽く包容をした。
期待を込めて。 新しい希望を込めて。


門扉を開けると待ち受けていたカメラのフラッシュと報道陣がマイクを向けながら
「今の気持ちはどう?今日の試合にむけての目標をお願いするよ!」
騒然とする周囲をよそにすっかり僕は自分の世界に入り込んでいた。

自分の過去。自分というアイデンティティ。
これまで何度思っただろう。
僕は日本人なのだろうか、それともカナダ人なんだろうか。
きっと両方だから両方のアイデンティティを持っていてもおかしくないんだと思う。

祖母が日本に住んでいると聞いたのは小学校を卒業した日だった。
6月のさわやかな風が僕を包み、同時に自分という存在をしっかりと認識した日でもあった。

両親が離婚したそのときの気持ちは悲しさだけしかない。
でも理由は分かる。僕なんだ。僕が生まれたことで母と父の関係は崩れた。
男と女の性って言うものを学校ではじめて先生が口にしたとき、恥ずかしさと戸惑い、そして知ったかぶりのクラスメイトを前に僕はようやく求めていた答えが見つかったような感覚に落ちた。

日本に来た理由。
それには祖母を見つけて僕自身を捜したいという気持ちがあった。
もう一つの祖国であるニッポンを見てみたかった。


バスケットボールを教えてくれたのは父であり、父の友人でバスケットボール元世界チャンピオンのチームにいたトニーだった。トニーはトロントで生まれ育ち、オリンピックにも出場、5年間代表チームでキャプテンとして功績を残した人だ。

僕は5歳の頃から父が暮らすアルバータ州のバンフで夏を過ごし、一夏はバスケット・登山そして釣り三昧だった。
外から見れば幸せな父と子の図だろう。

でも他人が決して入り込めない僕らの関係は、ドラマのようにロマンティックなものではなくむしろ傷ばかり背負っていた。

父が同性愛者だと言うことを小学校の先生に初めて聞いたのはやはり、ショック以外の言葉では言い表せない。
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by pepo629 | 2005-07-10 22:43 | Short Story


カバ君は本当に怖い。
黙ったまま後ろにぬぼーと立つからだ。

ある意味恐ろしいのだが、
例によって手を腰に当てて立っている姿はカバ君には全く似つかわない(爆)
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by pepo629 | 2005-07-07 14:25 | Short Story

にわか雨の予報士 3

アルバイト先で家庭教師をしている高校生の渉(わたる)が
興味深そうにそして怪訝そうな顔を見せて
「せんせい、今日はデートだったんですかぁ?」と聞いてきた。
開口一番そういうものだから焦った。
でも冷静を装って「余計なことを言わないでいい!単に姉貴の忘れ物を届けにいったら
姉貴の友人が居た・・・それだけだ!」と言い切った。

ここに来る前に姉貴の大学で起きたこと・・・。口にはしなかったけれど、強烈な印象だけは残った。香水の香りと共に。苦手で嫌いな香りと共に。

渉の言葉は好奇心だ。
言動や行動は何気なく彼の好奇心を揺さぶるのだろう。
勉強するぞ、試験落ちると困るんだろ!ハッパをかけて話題を本題へ持っていく。

2時間後無事準備してきた教材を終えて宿題を出した僕は
渉の家を出て萌のことを考えていた。
郊外にある渉の家から自宅へ戻るのは愛用の250ccのバイクだ。
バスや電車を乗り継げば30分以上かかるところを15分くらいで戻れる。

時計は8時5分前。
きっとこの時間なら駅前のケーキ屋さんがセールをしている。
萌に買って行ってやろうとケーキ屋に走った。

大好きな季節のフルーツ入りロールケーキを1000円のところを半額の値段で手に入れ、
萌の家にバイクを走らせた。

昼間電話を受け取ったときには全く予想もしなかった真実を聞かされることになろうとは
思いも寄らなかった。


にわか雨の予報士 2

にわか雨の予報士 4
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by pepo629 | 2005-06-25 22:28 | Short Story

にわか雨の予報士 2

「初めまして、冬美さん、じゃあ姉貴に渡しておいて貰えますか」
初対面の人にこれ以上話をしても仕方がないし、アルバイトの時間も迫っている。
話を切り上げようとした僕に冬美はこういった。
「つれないなぁ。せっかく逢えたんだし、飲まない?」
エルメスのスカーフが揺れている。僕は苦笑しながらこういった。
「いや、時間がないんですよ、アルバイトあるんで・・・」
人の気持ちとか都合とかを全く考えない人なんだろうか。
「アルバイトの時間まで・・良いでしょ?」とまで物申す。

返事に困ってるとお助け船の携帯が鳴った。
「もしもし?」
萌(もえ)だった。自宅から3分の近所に住む幼なじみだ。
「涼?今日ね、アルバイト何時に終わる?」
「多分8時半くらいに戻るよ、家に。」
「8時半かぁ・・・・。」残念そうな声に僕は聞いた。
「なんだ、どうしたんだよ」
「ちょっと相談があるんだけど、疲れるよね?」
「いいや、大丈夫だよ。・・・じゃあ、おまえんちに直接行くよ。8時半くらいで良いか?」
「待ってるね。有り難う」彼女の低い声は僕を穏やかにする。
「じゃ、直前にメールするよ」バイバイと声を出した萌は電話を切った。

電話を終えた僕が顔を上げるとエルメスのスカーフは消えていた。
いや、正しく言えば冬美だが・・・・。

しばしきょろきょろと探してみるが、すでに遅かった。
誰一人見あたらない。舌打ちをした僕は仕方なくアルバイト先に向かうことにした。

にわか雨の予報士

にわか雨の予報士 3
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by pepo629 | 2005-06-24 16:57 | Short Story

カバ君の一日(笑 10



昨日は朝カバ君は冷蔵庫の前に立っていた(爆)
そして昼ご飯のポテトサラダを冷蔵庫に入れようとしていた。
それだけなのに面白かった。

そしてカバ君はよく腰に手を置いて突っ立っていることが多い。
そして観察するのだ。周囲を。(爆)

あと印鑑(入れ物に入っている)を持ち歩いているので、いつも
音がする。カランカランと音を出すとカバ君はやってくるのだ(爆)

さてこのシリーズ続くのだろうか。(謎である)
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by pepo629 | 2005-06-24 16:32 | Short Story

にわか雨の予報士



 「涼(りょう)くん?」
姉貴の呼び出しで忘れ物を持って行った先で女性に声を掛けられた。
オペラ歌手を目指して音楽学科オペラ専攻している姉、涼子。
おっちょこちょいでお節介。そして卒業間近だというのに失恋の痛手に夜中よく泣いている。1月のお正月には、にこにこ笑って出かけていったのに、次の月のバレンタインディには泣いていた。

季節は5月。爽やかな風が気持ちいい季節だ。湿度を感じずに済む季節が一番好きだ。
授業の少ない月曜日、寝坊して起きた直後、携帯が鳴った。
毎朝必ずラジオで天気予報を確認するのだが、ラジオのスイッチを入れるより前に
姉貴の声で目が覚めた。

「あ、涼?悪いんだけど忘れ物しちゃてさー」

悪気なんて全くないから困りものである。
それどころか舌をだしておっちょこちょいのお姉ちゃんを許してね!と
笑うのだ。

苦笑しながら、自分の学校が終わった後、言われた約束の時間に学校まで出かけていった。
そしたら当の本人は何処へやら、別の女性に声を掛けられてる僕である。

「貴女は・・・?」
「ごめんね、涼子の友達で冬美と言います。ほら、有名な演歌歌手と同じ名前なの。」
演歌の冬美さんですか・・・。声にはしなかったけど、演歌歌手とは全く逆の外見に僕はたじろいだ。
エルメスのスカーフにローラアシュレーの大きな花柄のプリントされたロングスカートと白いブラウスを身につけていた。

苦手なタイプだった。でも話をしないわけにはいかない。

にわか雨の予報士 2
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by pepo629 | 2005-06-23 10:21 | Short Story