自由気ままな旅に出ています


by pepo629
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カテゴリ:Short Story( 42 )

虹色の空を見る日に

※病気で目が悪くなった人が空が黄色くみえたといっていたことからこれを書きました。



アカリは生まれつき弱視で、普段から色つき眼鏡をかけて歩いている。

大きくてキラキラ輝く瞳にはほとんど光が差し込まない。

アカリが大学合格が決まったとき、側で見守っていたいとこの聡(さとし)はホッとした。

入学式に大学の校門前で撮った着飾った二人の写真。

真っ赤なワンピースに黒いジャケットをきたアカリの腕に輝く銀のブレスレット。

アクセサリーデザイナー聡が手作りしたものだ。

「楽しい大学生活が送れたらいいな。」聡の言葉にアカリは頷いて答えた。

それから数ヶ月後の夏のある日、聡が町を歩いていて見たのはアカリが男と歩いてる姿だった。

週末、アカリに聞くと、アカリは赤い顔をしてこう答えた。

「航(わたる)が私に虹色の空を見せてくれるって言ったの」

「虹色の空?」聞き直した聡。アカリは続けた。

「彼ね、カメラで写真を撮るのが趣味で・・空を撮ることが多いの。空を眺めることが多くて・・
様々な空の表情を私にも見せたいんだって。」

「良かったじゃないか。優しいやつに会えて」聡は出されたコーヒーをすすった。

アカリが大学を卒業し、5年が経ったある日、フォトグラファーになった航が個展を開くというので、 休日、聡は電車に乗って大阪市内にあるビルの一角へ出掛けていった。

作品はアカリが言っていたように空の変化を写したものが大半だった。

心が現れるような真っ青な空、雨が降り出しそうなグレーの空、太陽が沈んでいく夕方の空・・・。

そして部屋の一番奥の空間に飾られていた2枚の写真に聡は言葉を失った。

1枚目は太陽に反射した水中に映る「虹色の空」、2枚目はアカリの裸体だった。

聡はじっと立ち止まったままアカリの裸体を見つめ続けた。

「随分お気に召したみたいですね。」
振り向くと男が立っていた。

「山路航です。今日はお越しくださいまして有り難うございます」
男は頭を下げた。

聡も会釈する。「この裸体の女性の写真にどうして「虹色の空」という題が付いてるんですか」

聡の聞いた質問に航はこういった。

「彼女は大学の時の恋人です。ある時、彼女が『本では空が青いって書いてあるんだけど、私の空は黄色い』と僕に言ったんです。
衝撃でしたね。そんなことから僕は写真という形が残る方法でなんとか虹色の空を撮ってやろうって決めたんです。」

「それで・・この右の写真が虹色の空だっておっしゃるんですね。」

「ええ・・まだまだ納得できませんが。今の自分にとって「虹色の空」ですね」

「是非、ア・・いや、彼女に「虹色の空」見せてやってください。長い間楽しみにしてましたから。」

アカリは手術が成功し、瞳に光が差すようになっていた。もうすぐ退院のはずだ。

「僕にとって「虹色の空」は生き方を教えてくれた先生ですね。
一つの考えだけに固執した生き方ではなく、様々な生き方があるって 教えて貰いましたからね。彼女には感謝し切れませんよ」 航の目は輝いていた。

「虹色の空を求めていたのは・・・私も同じです」聡も深い息を吸った。

航は咳払いをして自分の作品を見比べた。聡も虹色の空を見つめる。

背後の気配に気が付かない二人。

「聡!航!」

同時に振り向いた男をアカリは「ただいまぁ!」と笑顔で迎えた。

「素敵なプレゼントをありがとう」深々とお辞儀するアカリ。

聡と航はお互い顔を見合わせ、笑った。

「お帰りアカリ。」聡が言った。続いて航が「僕の方こそありがとう。」

その晩3人はバーでお酒を飲みながら思い出話に花を咲かせた。

時間を忘れるくらい楽しいひとときだった。 //




あとがき

こころの中の風景は本当に写真には納めきることが出来ません・・・。
感じることを忘れないこと、これを胸に今日も生きていきます。(笑
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by pepo629 | 2004-08-19 15:15 | Short Story

帰れソレントへ


プロローグ  愛を語れ

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1878年

 青い海、青い空、白い雲。

カプリは僕の大好きな故郷だ。この町に来る人は皆陽気に振るまい、何もなかったように去っていく。

昔も今も変わらないカプリの時間。

リゾート地として訪れる人たちとここに生まれ育った僕らの関係。

時間の流れは僕にも流れていた。

好きな音楽と好きな海。毎年夏はマリーナに出てはギターを持って歌った。

この年も同じだった。いつもと変わらない太陽と海と町。

そして、町を訪れる人たち。

 20になる前だった。美しい背景を背にいつものように歌を歌いにマリーナに出た。

人が集まり、僕の歌を聴いた。僕は目をつむって静かに歌った。恋の意味も分からない自分が恋の歌を必死に歌った。

愛の奥深さを知らない自分が愛を歌っていた。

愛を語ることは難しいのに、歌なら自然に出てくること。

嬉しいようなうっとうしいような・・・ジレンマだった。

二部  愛を知った瞬間

 恋人が居る友人が羨ましかった。

自分だって女の子に好かれたいと思った。

キスだって手をつなぐこともなかった僕は想像だけを膨らませて恋人と永遠に過ごせると思っていた。

永遠に幸せな気分のまま生きていけると思っていた・・・。

だけど、現実にはそんな永遠などなかった。

 エリーナに逢ったのは僕にとって衝撃だった。

彼女は僕に恋を教えてくれた。ほのかに燃え上がる感情、愛しいという想い、切ない思い、傷も幸せもそして、キスも・・・・

 エリーナは「ローマから来たの」というと帽子を取って、僕の歌を聴いた。

隣に座り、一緒に歌いたいと歌詞を教えてと言った。

年は聞かなかったが、年上ぽい落ち着きを持っていた。

ほのかに香水の匂いがする彼女が隣に座ったとき、僕は唾を飲んだ。落ち着くことが出来なかった。事実言葉が震えた。

微笑む彼女。おどおどしてる僕。

会って3日目、歩きたいというので、自分のお気に入りの場所に彼女を案内した。

オレンジの匂いが漂う中、僕らは歩いた。オレンジを一つ頂いて彼女に手渡すと彼女はおいしそうに頬ばった。見てるだけで幸せな気分に浸れた。太陽も海も町も輝いて見えた。

彼女の手を握るとオレンジの香りだった。

オレンジの香りは彼女を思い起こさせる。

彼女の息遣い。唇に付いたオレンジの果肉。

こぼれる果汁。

隣に座って話しかけてくるときの髪の匂い。

笑い声、一言一言の言葉遣いまで。オレンジの香りは全てを語る。愛を知った瞬間だった。

太陽を浴びてたわわに実ったオレンジ。彼女の手によってもぎ取られ、食べられてしまう僕。食べられて忘れ去られる僕。

お互い愛し合ってると思っていたのに彼女はそう言うつもりで付き合っていなかったと知ったときの切なさ。信頼しあっていたと思っていたのに、自分の思いこみだったと知ったときの空しさ。

オレンジを見ると何もかも思い出す。

帰ってきて欲しいと何度も思った。

あれから何年経っても脳裏に甦る。

別れ際君が言った言葉が信じられなかった。

「素敵な夏をありがとう。」

そして言ったね。

「私は行くわ。」

あっさりと。僕の気持ちをかわすように。

 あれ以来連絡はない。 どうしたって言うんだろう。

 心配で連絡したくても家の住所が分からない。

ポストだってない・・・。郵便局員さえいないカプリの島。僕は歌を歌うことで君を忘れようとした。

忘れることなど出来ないはずなのに、必死に前に進もうと努力したんだ・・・・。



 三部  ポスト

あの恋から20年以上経った1904年首相に歌を贈り、カプリの島にポストが設置されることになった。

島に待望の郵便局が出来た。気持ちを切手に託して伝える事が出来るようになっていた。僕は40になっていた。結婚し、子どもが生まれ、そして歌を作って生活を送ってきた。町の人に「歌を作ってくれ」と言われたとき、否応なく彼女との思い出を詰め込んだ。

首相はもちろん町の人も歌を愛した。

今も昔も変わらない海を見ながらほのかに思った。

彼女がもしこの歌を口ずさむことがあれば、僕は永遠という言葉を信じよう。 

思い出は思い出に過ぎないけれど、20年前のあの瞬間はやはり衝撃そのものだった・・・。

嘘で固められ、ドラマチックに演出していようと、幸せだった。

そう、あの恋で振られたからと言って不幸だとは思わない。

何度も泣かされたり、戸惑ったりしたけれど僕は本当に君に逢えてよかった。

彼女が帰ってきて欲しいと何度も思ったけれど、帰ってきたらきっと目を合わすことなど出来ないだろう。君は美しい思い出なのだ。心の中に閉じこめておかねばならない。

あのときマリーナで口ずさんでいた歌と共に・・。

 「帰れ!ソレントへ!

  帰れ!思い出の地に!

  愛しい君を僕は永遠に閉じこめるから!」 

 郵便局が出来た日、君宛の手紙をポストに投函したよ。

君に届いてると良いけれど・・・



★この作品は帰れソレントへ!の曲の背景を元に作ってみました・。・
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by pepo629 | 2004-07-30 14:57 | Short Story