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自由気ままな旅に出ています


by pepo629
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Akira & エリカ 2

 新聞に載る記事の重みを考えたことがあるだろうか。
たった数行の文章の中に人の人生を凝縮した言葉が数限りなく記されていることを考えたことあるだろうか。

 日常 から 非常。

 望んでもないことが起こってしまった二人に今まで同じように歩んできた道に戻ることは容易ではない。

 
 僕が日本にやってきて2年は大きな事件もなく平穏だった。
カナダとの文化の違いに戸惑いながらも京都市内では青い目をして日本語がうまいエリカと日本人の格好をしているのに英語の方が得意な僕というカップルとして目立つという程度だった。
カナダでやってきたスポーツの多くは地元の高校へ進学することになったときも続けたし、試合にも出た。遠征に行くたびいい汗をかけたし、負けたときは打ち上げと称して覚えたてのお笑い芸人のまねを部員たちの前で披露しては笑いを誘った。

日本に比べて夏の短いカナダには野球やサッカーよりもホッキー(カナダではホッケーとは発音しない)をやる人の方が多いが、僕は冬でも友人を誘っては無料のテニスコートでテニスをしたり、肥満防止にとサッカーを室内でやったりした。

運動をすることに対する拒否感が全くない僕に対して、エリカは面倒くさがりだった。
僕がクラブ活動に打ち込んでる間中、コート外で応援をしてみたり、飲み物を準備したり・・・と自ら運動に励もうとはしなかった。

代わりに音楽を愛し、吹奏楽部でクラリネットを弾くことに情熱を傾けていた。
自宅ではいつもギター片手の僕についてクラリネットの吹く練習を続けた。

エリカが変わったわ。
彼女の家族に僕の存在を感謝されたとき、僕ははにかみながらこういった。
僕も大きく変わりました。彼女に感化されて行くんです・・・・と。


日常が平穏だとすれば、平穏という言葉はとても脆い。
それは初夏、6月の第三土曜日だった。バスケットの試合でクラブ遠征に出かけたときだ。授業の関係上、エリカは居なかった。僕とエリカにとって地獄の入り口に入りかけた一日だった。
by pepo629 | 2005-02-12 21:57 | Short Story